ダンボールにぶち込んだままだった蔵書を全部出して整理し、自慢の本棚にそろえて収納したので、背表紙がきれいに見えて目当ての本が探しやすくなりました。ふふふ。
ということで、今回は五人の作家の代表作を挙げつつ『万人にはオススメできないブックガイド』の国内ミステリ編を勝手にお届けしてまいります。
だけどまずもって「国内ミステリ」という言葉もしっくりきませんし(ここではざっくり日本の作家が書いたモノ全般を対象とします)、「広義のミステリ」と「狭義のミステリ」、さらには「本格」とか「新本格」とか「変格」とかいうややこしい定義の問題もあるんですが、あまりその辺りには深入りせずに、単純に面白い小説ということでご諒解ください。
私の読書傾向としては、海外ミステリと同じで、やっぱり作家を追いかけながら読み込んでいくタイプ。また、謎解きに主眼を置いたパズル的な推理小説よりも、アクション込みのハード系が好みのようです。
一方でここ十数年の傾向として、純文学からSF、マンガ、映画、ドラマ、ゲームまで、あらゆるジャンルでミステリ的な要素が濃い作品が増え、ボーダーが溶けてなくなってしまった感があります。乱歩先生がこの現状を見たらどう思うか。きっと喜ぶと思うけどなあ。それだけ認知を得て、広く受け入れられたということだから。だって戦前なんかは、猟奇的な殺人事件が起こるたびに探偵小説が引き合いに出されていた時代もあって、だからこそ乱歩先生は戦後、探偵小説の普及や一般化に努めた人生だったと思いますから。
※念のため:江戸川乱歩という筆名はエドガー・アラン・ポーのアナグラム。本名は平井太郎。
1)月村了衛『機龍警察』
現時点で、最も次作が待たれる作家の一人でしょう。代表作『機龍警察』シリーズは、ぜひとも読んでほしいところ。SF(!)と警察小説とアクションがごっちゃになりつつもリアルな世界観。そこに、重めの国際情勢(民族紛争や宗教対立、少年兵の問題など)を縦軸に、現代的な対テロの攻防を横軸に織り込んだ、スリリングなストーリーが展開されます。
シリーズとしては『機龍警察』『機龍警察 自爆条項』『機龍警察 暗黒市場』『機龍警察 未亡旅団』『機龍警察 火宅(短編集)』まで刊行済み。警察組織内の相克と同時進行で、傭兵がサイボーグ的な搭乗兵器(機甲兵装)に乗って戦います。そうです、驚くなかれ、ロボット物でもあるんですね。
なので、首に後ろにコードを挿します(正確には脊髄に埋め込まれた「龍髭(ウィスカー)」と機体側の「龍骨」をリンクさせる)。やっぱり首の後ろに挿さないと!! サイバーパンクの発祥的SF小説『ニューロマンサー』から『攻殻機動隊』シリーズ、そして映画『マトリックス』シリーズまで、首の後ろにコードを挿す系譜(?)の伝統を守っているところが楽しい。まあ『ニューロマンサー』はサロンパスみたいなのを首の後ろにペタッと貼るんですけども。いずれもその状態がオンラインということね。
余談ですが、スマホの異様なスピードでの進化、ウェアラブル端末(メガネ・時計)やIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の普及が進むと、この先どうなるか。もはや端末が人体に埋め込まれるのは必定でありましょう。常時オンライン。もうコンタクトまでできちゃってますからね。
完全なるSFの世界。ゆえに意志を持ってオフラインを選択し、人類の尊厳を守ろうとする戦いが物語上で繰り広げられるでしょうね。