【家族の研究】卓球必勝法

[Naotyan(44歳・無職・伯父) 0-0 Shota(15歳・学生・甥)]
●Table tennis(卓球)/1セットマッチ:21点先取

よしショータ。今日はナオちゃんが卓球、というか球技全般の必勝法を伝授しよう。実戦で直接指導だ。こう見えてもナオちゃんは、高校・大学で硬式庭球、つまりテニスに打ち込んできたスポーツマンだからね。卓球も得意なんだ。

笑うんじゃない! 今でこそ、こんな体型でハゲ散らかしちゃってるけれども、当時はバリバリのテニスボーイで、髪型もツーブロックでモテたんだ!! つーことで長年の経験の末に編み出した三つの究極奥義を、甥っ子であるショータだけに特別に教えて進ぜよう。では、よろしくお願いします!! ナオちゃんのサーブからね。よしっ集中!

[N 2-0 S]

①球技は性格が悪い方が勝つ
これは卓球だけじゃなくて、すべての球技に共通の真理だ。よく「正々堂々とスポーツマンシップにのっとり……」って選手宣誓するけれども、あれウソだからね。

だって考えてもみなさい、卓球でもテニスでもどんな球技でも、わざわざ相手の得意なところに打ちやすいボールを返しますか? 意味ないでしょう。相手が苦手なところに打ちにくいボールを返すのが、試合におけるセオリー中のセオリーなんだ。ゆえに性格が悪い方が勝つ。だって相手が嫌がるところばっかり、ずーっと狙ってるんだから。

一般的には「バックサイドに深いボール」というのが定石。そう、だいたいの人はバックハンドが苦手だからね。

[N 6-2 S]

②ポイントは九割ミス
うーん、今のはちょっと力が入りすぎてるかなあ。テニスのニシコリくんや、こないだのオリンピックでメダルを獲った卓球のミズタニくん、カッコいいよね。真似したくなるよね、あんなプレー。思い切りラケットを振り抜いてエースを決めたら、そりゃあスカッと気持ちいいでしょう。

しかーし! それじゃあダメなんだ。なぜかと云うと、我々素人の試合は九割方、相手か自分のミスでポイントが決まるから。現実的にはエースの取り合いじゃなくて、ミスの押しつけ合いなんだよ、試合って。

試合はミスが少ない方が勝つ。んで、ミスを減らすためにはどうするか。練習? うん、もちろん大事。練習しないで勝てるわけがない。でもね、練習でいくら上手でも、試合なるとなぜか弱い選手もいるのね。逆に練習ではそんなにうまそうに見えないんだけど、試合にはなぜか強いという選手もいるんだ。

[N 11-6 S]

コツがあるんだよ、試合に勝つには。知りたいでしょう? じゃあ発表します。それは「六割の力で打つ」こと。理由は全力でラケットを振ったら、かなりの確率でミスするから。そりゃあさあ、思い切りスイングして、相手コートにビシッと決めたら気持ちいいよ。その瞬間は、勝ったような気分になるでしょう。でもね、試合ではそういうエースで決めたポイントも、さっきのナオちゃんみたいな、しょうもないしょっぼいミスも、同じ1ポイントなのね。

[N 15-10 S]

もっと具体的に云うと「相手のバックサイドに六割の力でゆる~いボールをしつこく返し続ける」のが、実践的な必勝法なんだ。これで勝てる。OK? つまり素人の試合は「相手のバックサイドに六割の力でゆる~いボールをしつこく返し続ける」戦いなのね、卓球もテニスも。

じゃあなんで練習が必要かというと、エアKをカッコよく決めるためじゃない。どんなボールが来ても「相手のバックにゆる~いボールを返す」技術を身につけるためなんだよ、本当は。そしたら相手が先にミスしてくれるから。

[N 19-11 S]

③ボールを見ろ!
うんナイスショット! 今のはいいよー、ナイスボールっ!! さて、最後の究極奥義を伝授しよう。それは「ボールを見る」こと。当たり前だって? そう、でもね、人はどうしても次の展開を考えて、ラケットにボールが当たる前に、相手コートの方を見ちゃうんだよ。

だから試合中は常に自分に言い聞かせるんだ。「ボールを見ろ!」って。ラケットに当たる瞬間までボールから目を離さない。でもこれがなかなか難しい。実際にできればミスも減るし、いいストロークが返せるよ。

★Win★[Naotyan 21-15 Shota]

はい、ありがとうございました。試合が終わったら、勝っても負けても必ず握手!ということで、以上の三つの必勝法をしっかり守って、これからも練習するように!!

あとさあ、お菓子ばっかり食ってないで、ちゃんとごはんを食べて運動しなさいよ。そうしたら、次はナオちゃんに勝てるから(来年試合したら負けるなこりゃ……何か卑怯な手を考えないと……)。