3)東直己『残光』

自分が暮らす町に探偵がいるというのは、ミステリ好きにとってはそこはかとなくうれしいもの。事件の中に出てきた町並みや店のモデルが「あーここかー」とわかりますからね。『探偵はバーにいる』の東直己の小説はすべて読んでいると思いますが(売れてよかった)、登場人物の成長や年を重ねていくタイミングと、読み手側の現実の歩みが同じペースで進んでいくのも楽しみの一つ。私と同様の感覚で、シリーズ物のミステリを楽しみにしているマジメなサラリーマンなんかもたぶんいると思うんだけどなあ。
東さんのミステリ作品では、主人公で分けると、主に三つのシリーズが展開・並走しています。舞台はいずれも札幌やその近郊。ぜひ刊行順に読み進めてほしいところですが、なかでもこの『残光』(第54回日本推理作家協会賞受賞作)は無敵の殺し屋・榊原健三を主人公に据えたシリーズの二作目にあたり、激烈なアクションが連続していきます。そして何よりも、別シリーズの登場人物がカメオ出演するオールスター的なサービスもうれしいところ。『探偵はバーにいる』の名無しの探偵も重要な役どころで登場し、ここでも死にそうになります(笑)。
また、この三つのシリーズを横断する悪役(女子高生!)なんかもいたりします。そんな仕掛けにもグッときますね。