1)ドン・ウィンズロウ『犬の力』上・下

元は『ストリート・キッズ』だったという青年ニール・ケアリーが探偵として成長していく過程を描いた瑞々しいシリーズでデビュー。以来、ずっと追いかけていますが、その後世界的な人気作家になるとともに、その物語世界がとんでもない領域にまで達してしまったのが『犬の力』。ハードボイルドとかクライムノベルとかのジャンル分けがもはや意味を為さない、単なる「強力な小説」。現代アメリカの諸問題(ここではドラッグ)に対する作者の怒りが執筆の原動力になっていることもあり、冒頭からエグい事態が巻き起こり、登場人物の思惑と行動がスピード感豊かに交錯して、怒涛のラストまでなだれ込みます。続編『ザ・カルテル』上・下も。
2)ジョー・R・ランズデール『罪深き誘惑のマンボ』

アメリカ南部を舞台に、ゲイの黒人レナード&ストレートの白人ハップのコンビが差別用語満載の会話の速射砲を交わしながら、事件を解決するハメに陥るシリーズ。毎回必ず隣家に放火するシーンがあって笑います。このシリーズの邦訳が03年で止まっちゃってるんですが、角川文庫さん、お願いしますよ。ちなみに『独身貴族』第一号「日記まつり」の冒頭に一文を引用していますね、好きすぎて。
「たぶん、ものごとをだめにしちまうのはセックスなのさ。あの番組のクマたちのように、楽しく二匹のマンボを踊り出したとたん、すべてがばらばらになりはじめるんだ」
いい文章!
3)ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Qー檻の中の女ー』

デンマーク発の警察小説シリーズ第1作。未解決事件を専門に扱う「特捜部Q」を任された刑事カール・マークとチームの面々が奮闘するーーと書くとありがちな設定に見えますが、とんでもない。特にこの第1作は、捜査の進展と交互に挟み込まれる被害者が置かれた異様な状況の描写が緊迫度を極限まで高め、息をつかせぬ面白さ。2016.10時点でシリーズ6作目『特捜部Qー吊るされた少女ー』まで邦訳済み(これだけ未読)。また第1作と第2作『特捜部Qーキジ殺しー』は映画化もされています。