4)ピエール・ルメートル『その女アレックス』

こちらはフランス発。各賞総ナメの最近のベストセラーなので、本屋に平積みされていますね。ネタバレは避けたいんですが、『その女アレックス』はねえ、うーん、中盤の大転換が二度見三度見級の驚愕。そして皆さん指摘していますが、邦訳のタイミングと実際の刊行順が前後している関係上、シリーズとしての読む順番がいささか難しくなっていて、正解は『悲しみのイレーヌ』→『その女アレックス』→『傷だらけのカミーユ』の順で。私は最新刊『傷だらけのカミーユ』を現在読んでいます。
5)ジェイムズ・エルロイ『わが母なる暗黒』

ここからはちょっと好みが分かれるところ。映画『L.A.コンフィデンシャル』の原作者と云えば一般的には通りはいいかもしれません。が、小説はそんなもんじゃない(逆に映画はよくあそこまで脚本をまとめたもんだと思いますね)。
「アメリカ文学界の狂犬」という異名を持ち、世界中に「エルロイの息子たち」と呼ばれる作家群を生んだ暗黒小説(ロマン・ノワール)の旗手。『わが母なる暗黒』は10歳の時に実母が絞殺された経験をもとに書かれたノンフィクション。そう、小説じゃなくて、ノンフィクションを挙げているんだけども、というのも小説の極端な体現止めや報告書的文書の膨大な挿入、押韻を駆使する狂った文体(訳者が偉い)のハードルが若干高いかな、と思ったから。
小説の入り口としては短編集『獣どもの街』でしょうか。長編シリーズ「暗黒のL.A.4部作」「アンダーワールドU.S.A3部作」は、現代アメリカの歴史を丸ごと、パルプフィクション的文脈で書き直してしまうという壮大な試み。「暗黒のL.A.4部作」の第4部『ホワイト・ジャズ』までたどり着いてほしいなあ。
6)ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』

こちらもちょっと人を選びそうな、時間に余裕がある方向け。著者は1960年代から書きつづけているスパイ小説の大家ですが、007的な荒事(アクション)はほとんどなく、敵味方双方のジリジリとした心理戦が延々と続きます。
このため、いわゆるリーダビリティー(読みやすさ)はほとんどなく、はっきり云うとぜんぜん読み進まないから! でも、くたびれた初老の元英国諜報部員スマイリーが主人公の3部作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(同作が原作の映画『裏切りのサーカス』も面白い)、『スクールボーイ閣下(上・下)』、『スマイリーと仲間たち』をじっくりと読み進めていくと、最後に叫びたくなるような、とんでもないカタルシスが訪れます。
一人の作家の小説を刊行順に読み込んでいくと、その作品世界がグッと広がる瞬間や、問題意識が深まっていく歩みを体感できるもの。それがまた海外ミステリを読む楽しみの一つとも云えるでしょうね。
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