【狩猟サミット】講演採録(参考)

●猪鹿庁・瀬戸祐介 × 久保俊治

瀬戸 21歳の時にどうも日本のキャンプとかアウトドアが物足りなくて、当時アラスカ関係の本を読んでまして、開高健とか野田知佑とか、星野道夫とか。俺、アラスカに行きたいと。最初はキングサーモンを獲ろうと思ってたんですが、向こうの「ウォルマート」っていう巨大なホームセンターには、鉄砲とか弓矢とかクロスボウとか、めちゃめちゃ売ってまして。で、当時ゲーマーだったんですけども「バイオハザード」というゲームでコルトパイソンが強いと。僕はコルトパイソンが欲しくて買おうとしたら、旅行者は2週間しないと買えないと。売ってもらえませんでした。

なので、旅行者でも買えるものとしては弓矢があると。じゃあこれで行こうと、ブローニングのハンティングボウを買ってですね。カヌーで川を下ってベーリング海の方の村に単身乗り込んで、サケを撃ったりして。だから僕が生まれてはじめて狩りをしたのは、日本じゃなくてアラスカです。カリブーも弓矢で狙っていて、最初はぜんぜん近づけなくて。射程距離も30mぐらいしかなくて、這っていったり、待ち伏せしたり、夜通し木の上で弓矢を持って待ってたり。昼間は近づけないことがわかってきて、夜にカリブーを弓で仕留めたのが僕の最初の狩りです。

日本に帰ってからは、そもそも弓矢も使えないんでやめようかと思っていましたけど、鉄砲撃ちのおじさんが亡くなった時に使えそうな奴はお前ぐらいしかないからと、ただでショットガンをもらいまして。それで今も狩猟を免許を取ってしています。当時は日光に住んでいたんですけども、始めた年が3.11で、シカから2400ベクレルの放射能が出まして。こりゃちょっとダメだなと。ここで自給自足生活はできないと判断して、実家の飛騨に帰ってきました。

帰ってきたらですね、なんとシカを獲ったら3万円もらえるよと。え、ちょっと待ってくれよと。3万円だったらほかバイトに行かなくてもいいでしょと。奥さんとも相談して、半年間しか狩猟期間がないんですけど、ひたすらシカを獲りまして。密度が高いので、たぶん久保さんの時代と全然状況が違うと思うんですけど、半年で70頭ほど獲りまして、かなりいい稼ぎに。するとうちの奥さんから「もっと獲れ」と言われまして(笑)。上下二連の散弾銃は射程距離が短いんで、長距離用のハーフライフルを手に入れて、それで確率が上がりました。

現在は岐阜県で「猪鹿庁」という、若い猟師が猟でちゃんと食っていけるような仕組みを作ろうという活動をしています。山でキャンプをしたりとか、ナイフを叩き出しで作るとか。そんなことをして生計を立てています。

久保 いちばんいいですね。そのほかにアラスカでの猟は?

瀬戸 アラスカではシャケですね、弓矢で打つのがおもしろくて。大物用とか、魚用とか、ブレードがいろいろあるんです。

久保 私がアメリカでガイドライセンスを取った時に、弓矢で来るお客さんがいちばん手間がかかったんですね。弓矢でクマを獲りたい。犬をかけてクマを木に追い上げて、合図してね。みんな腕自慢の人が来るんだけど、実際15~20mぐらいのところにクマを止めておいても、興奮しているせいか、なかなか当たらない。処理する時にもブレードが残ってることがあるから気をつけなきゃならない。マスケット銃のお客さんよりも、弓矢のお客さんがいちばん手間がかかりましたね。

瀬戸 アメリカはぜんぜん法律的な制約がないんで、ナイフで獲る人とかいますからね。

久保 猟に対する姿勢が違いますから。タグを買っていれば、その分は獲れるわけですから。

瀬戸 釣りの入漁券みたいのをフィッシュ&ゲームスというオフィスで買えば。シカの券とか、クマの券とか、頭数はあるんですけど。

久保 ただし、その券が余っていればの話ですけどね。なくなると買えませんから。

瀬戸 そうですね、一定数。

久保 ある数しか出しませんから。そのほかに特にエルクの場合だったら、肉を運ぶ券もあって、ガイドの仕事として肉を運んでる時にそのタグがついてなかったら、一発で捕まってライフル没収になっちまう。どんなことしても返してくれませんから。田舎町に行くと、野生鳥獣の肉屋さんというのがあるわけですよ。そこでエルクなんかも全部きれいに解体して、中落ちの部分も全部ハンバーク用の肉にして。ガイドの仕事としては、お客さんに獲らせて、解体やトロフィーにするためのスキニング(皮剥ぎ)というのもありますから、それをキチッとしないやつは、トロフィーにならないわけですよ。目ん玉つけてもただポコっとあるだけで。中の石膏が見えるような下手な剥ぎ方はしちゃダメなんですよね。そういうことを学校ですべて習いますから。自慢になるんだけども、校長は俺のナイフさばきみて、次から助手に使ってくれましたからね。グッジョブですよ。

瀬戸 軟骨とかめんどくさいんですよね、耳の裏とか。

久保 耳も全部剥ぐんですよ、クマでもなんでも。そこに塩を塗り込んでってことですからね。日本では今はトロフィーはさっぱり売れないですけれども、技術なり知識としてそういうやり方をキチッと身につけないとならないですね。

瀬戸 なかなか売れない。

久保 売れる時代が来るかもしれないんだから、その時のために技術を残しておかなきゃ。あとはそういう野生動物に関する仕事の中身としては、やっぱり剥製屋さんの技術を身につけなきゃ。日本なんかほんとに下手ですからね。見るも無残ですよね。

瀬戸 業者によって違いますよね。一度、クマのなめしを頼んだら、毛が真っ白になっちゃって。皮なめしはだいぶみなさん、興味ありありだと思うんですけど、どうでしょう?

久保 そうだと思いますね。(瀬戸さんが)タヌキの毛皮を着てましたでしょ。あれは自分でなめされたと思うんですけど、まだミョウバンなめしのまま止まってますでしょ。本州の業者さんで柿渋をやってる人がいるからね、その人からもらって裏から塗ると防水にもなるから。最高のタンニンなめしができますよ。

瀬戸 塗ればいいだけですか?

久保 塗ればいいだけ。和紙の雨傘を作る時のやつと同じだから。あれだけきれいにミョウバンなめしができているんであれば、あとはタンニンなめしにしてもぜんぜん問題ないですから。

瀬戸 柿渋、やってみます。

久保 柿渋はぜったいいいですよ。話どんどん違う方に行っちゃってるけど(笑)。

瀬戸 僕は子どものころ、狩猟民族になりたくて。アラスカまで行かないとそういう暮らしはできないだろうと思ってたんですけど、今、日本は獲物がうじゃうじゃいますからね。意外とみなさん、がんばったらビジネスチャンスがあるんじゃないかと思います。日本にいながら、アラスカみたいな生活ができる可能性があるんで。

久保 まずね、金にして何とか食おうと思わないことです、若い人は。食えなくてもいいから、やってみたいと思ったら、一生懸命になってやれって! 腹が減ったって、三度の食事を一度にしてでも、自分の好きなことをやってたら我慢できるんですから。そのファイトがないのに、鉄砲をやりたいだの、あれやりたいだの。それじゃあ、今の街場にいる人と同じようなもんでしょ。絶対にね、自分の好きなことで何とかやろうと思ったら、何とかなるもんです。自分のことを見れば、そう思いますもん。

瀬戸 そうですね。僕もとにかく最初は猟の時間が取れなくて。獲物を撃つ瞬間なんて、猟のうちのほんの少しで、そのために膨大な下見とか探索の時間が必要で。その時間が欲しかったし、とにかく猟をしてみたかった。結果としてお金がもらえると。

久保 いいものを食いたい、便利なところに住みたい、あったかい所にいたい。それで鉄砲もやりたいなんて、絶対できるわけないんだもん。鉄砲をやるんだったら、ほかのものを全部切り捨ててもいいからやりゃあいいんですよ。ただしそういうことをしようと思っても、今はうんという親はいないだろうね。その点、俺は恵まれてた方。

瀬戸 その辺は僕も恵まれてました。誕生日にこんなでかいナイフを親父が買ってくれたり。

久保 いい親ですね。息子に武器を買い与える。それがいいじゃないですか、ねえ。

瀬戸 ありがとうございます。それで弓矢を作って、山にいる時間がほんとに好きで。

久保 獲れる獲れないの問題じゃないんですよ。

瀬戸 その瞬間が好きで。

久保 そう! 若いうちは「いつ獲れるんだ?」っていうその時間が長ければ長いほど、後から芽が出るんですよ。それがなくてパッと鉄砲持ちたいって言ったって、ものになりませんな、はっきり言って。環境省はね、鉄砲だけ持たせて、やれ駆除せい、駆除せいって。バカ言うなって。

瀬戸 ぜひ環境省に弓矢の解禁の圧力を。

久保 弓矢は音をたてないから危ないって言うんですよね。

瀬戸 いや鉄砲の方がよっぽど危ないですよ。