【狩猟サミット】講演採録(参考)

●田歌舍・藤原誉 × 久保俊治

藤原 京都の山の奥で21年前、大学を卒業してすぐに自給自足的な生活に入りました。その時の自分の中に温まっていた予感のようなもの、食べ物を作ったり、建物を建てたり、そういう自給的な暮らしでやっていけるよねってことを確信して、そこからずっと自給自足の暮らしで今に至るんだけど、狩猟との出会いは遅くて。大学で大阪にいた時代は家を建てるとか、農業をするということには意識はあったんだけど、狩猟というものが実在する、自分のものになっていくというのは、夢にも思わなかった。

今日、実は久保さんと何を話そうかなと考えていて、犬かなあと思っているんですね。僕自身は21年前に飼い始めた犬との暮らしが猟の始まりです。猟犬に育って、犬が俺に猟を教えてくれた。自給自足を成り立たせていくというところからスタートして、30歳の頃に猟のある暮らしの中で、もっと自分のやってることを伝えていきたいなあと思って、まあ経済活動もあるからね、田舎のフリーターみたいな暮らしをしていたんだけど、自営業で自分のお店「田歌舎(たうたしゃ)」を始めて。今ではスタッフたちとともに自給自足のレストランや、狩猟も含めたアウトドアのツアーもやっている。そういう団体を作って今に至ると。

さっきの久保さんの話を聞きながら、みんなに思いをどう伝えるか、話し方が難しいんだけど、共感している部分がたくさんあります。今日のこの少ない時間では、久保さんとは犬の話をしたいかなと思います。

僕自身、21年前に出会った犬と自給自足をスタートするわけだけれども、当時は千松さんのいる京都と僕のいる京都の山奥では獣の様子が違うというか。そこは獣にとっての大都会で、いちばん楽しい場所だった。今は街場の方がシカが増えすぎてという状況になっていて、山奥ほど食べ物がない。獣のドーナツ化現象、京都市内の方が多いという状況になっているんだけど。僕が猟を始めた頃はあふれんばかりの獣がいた。僕は大した技量も持たないので、犬とともに危ないこともたくさん経験したし、でもそこで犬と友情が芽生えてね。久保さんの本を読ませていただくと、自分の犬がどうだったというのはなかなか伝えきれるものではないんだけど、本当に特別の人間関係が育まれていったわけだよね。今、その猟犬たちの子孫がもう5代目に入っているんだけど。

(猟犬の犬種は?)
藤原 雑種で体重は20kgぐらいですね。

久保 私は北海道犬、小さいメスですね。

藤原 オスがムラっけがあって。

久保 やっぱり仕事が丁寧なんですよ、メスは。犬に関してはですよ(笑)。たとえば、猫の場合はある程度時間がたつとオスの方が飼いやすくなる。メンタ(メス)は子どもを産むということで、その気質がずっと残るんですね。神経質で飼い主にしか慣れないみたいな。

(猟犬に育てるには)
藤原 人間と同じだよ。犬も猟を覚えていく資質がある。人に喜怒哀楽があるのと同じで、達成感や成功体験があって、一緒に獲れてうれしい、こうやれば獲れるという積み重ねで。今育ててるメスは、獲物を止めている時に、俺が近づいていったら、ちゃんと横目で見てるのね。撃ってくださいと、その瞬間はぴょんと離れる。だけどオスメス話でいうと、オスもすげえいい犬がいるんだけども、ムキになっちゃうと、静止できない。もう噛み始めたら止まれないね、彼自身は。メスは俺と会話をするというか、一回一回学んでいって、何をすべきかというのを覚えていってくれるけど、オスは我々と一緒で止まらない。

久保 昔の大物猟ではそういうのもあるけれども、私の場合は犬は噛みつく必要がなかったの。俺が行くまで、1時間でも2時間でも止めてるだけの根気があるやつ。実際それができるのはすごいことですよね。人間がその場に追いついたら、ますます頑張りますし。頑張るっていっても噛みついたりするわけでない。自信が、勇気が出るんでしょうね。

藤原 やっぱり犬は自分で仕留めきれるものではないんで、人が一緒になって。

久保 そうです、教えていかないとダメです。やっぱりケガをする犬が多くなる。私が小さい犬を選ぶのは、大きくなると藪の中で体を持て余すに決まってるからなんですね。また犬のことで言うと、犬にも利き足があるはずなんです。今のテレビの宣伝に出てくる犬なんかでも、尾っぽの巻き方が右巻きでしょ。私なんかは子どもの頃から尻尾の巻き方が左巻き、アイヌ犬は左巻きって教わりました。犬の腰の動きがぜんぜん違う。人間でも右利きと左利きがあるのと一緒で、犬の右巻きっていうのは昔はレアだったんですよね。右巻きの犬を山に連れていって使えるかと言ったら、本当の意味では使えないんでないかと思ってる。なんで読んだかわからないけど、それを研究している人もいたんですよね。動物の利き手、みたいな感じで。忘れちゃったなあ、ただ読みっぱなしなもんだから。アイヌ犬を選ぶんだったら、左巻き。「私の犬は左巻き」(笑)。

藤原 僕自身は尻尾の右巻き、左巻きは気にしたことがない。でも犬にとって尻尾はすごく大事で、くるくるって巻きっぱなしの尻尾は猟犬じゃない。猟犬の尻尾はすっと垂れててね、バランスの舵取りをしてるんだね。今、僕の犬の飼い方は、これは賛否両論、ほんとにみんないろんなことを言わはるんだけど、「犬が犬を教える」というやり方で。一頭目は僕とのいろんなストーリーがあるんだけど、そこからはそんな飼い方はできなくて、犬が犬を育てるというかたちで、おばあたちがこまいのを教えてくれるっていうね。群れで育んでいってくれる。

久保 うちの場合は、まあ一犬主義だったから、そういうのはちょっとあれですけどね。そこでもって、タネを見つけてコッコを取ってというね、そこをずぼらこいたもんだから、フチ(能登註:久保さんの相棒だったアイヌ犬)を失ってしまったんですよ。未だに悔いてますもんね。やっぱり犬も最後まで……ダメ(涙ぐむ)。だらしないよなあ……。

藤原 伝わります。僕も人生を変えてくれた一頭目の犬には後悔を残してるんでね。11歳で亡くなったんだけど、死因はガンで。なんで健康な犬がガンになったのかというそもそもの原因がわからずにいたんだけど、実は今、確信してるんですよ。おそらくそうだと。当時、ハクビシンとか外来種がめちゃくちゃ増えてて、キツネやタヌキが疥癬という病気にかかって、それが爆発的に増えて。野生のキツネやタヌキがほとんど疥癬で絶滅してしまうんじゃないかっていうぐらい病気だらけになった時期があって、それをもらっちゃったんですね。もうやっかいな病気。獣医には3回にわたって連れていかなくちゃならないんだけど、高い高い治療費で。当時ほんまにお金がなくて、100円のサンマを買って朝と晩に食べるような暮らしの中でね、その治療費が俺にはすげえ重たくて。知り合いを介して、牛用の疥癬の薬をね。

久保 危ない。

藤原 危ないんですよね。量を的確に聞いて自分で注射器を持って犬が疥癬にかかった時にやってたんだけど。まあそれは真実かどうかはわからないんだけど、やっぱり俺は安易にその薬をやりすぎたんじゃないかと。すっごい後悔しています。だから久保さんの犬の話を聞いてその通りだなと。